ブラックソナタ
◇そなたの名は・・・?
「ブラックソナタ」は、シェイクスピアの『ソネット集』という詩集のなかの「ダーク・レディ(黒い女)」をモチーフにしたソロゲームです
ダーク・レディはあくまで作品に登場するキャラクターですが、歴史上の人物の中にモデルがいるのではないかとも言われており、「ダーク・レディはいったい誰か?」というトピックは古くからあったようです。
その謎の女性の正体を探索と演繹的推理で特定しよう、というのがこのゲームなのです
ある程度ボードゲームに通じている人向けに説明すると「スコットランドヤード」+「スルース」というところでしょうか
1人で追いかけっこ
ゲームの最初にレディの正体カードがランダムに1枚伏せられます
このカードにある、3つのアイコンを特定するのがこのゲームの目的(勝利)なんですが、その手がかりを得るにはロンドン中を逃げ回るレディを発見しなければなりません
このレディを追いかける部分が「スコットランドヤード」的な仕掛けになっているんです
「スコットランドヤード」は、怪盗Xプレイヤーと捜査陣チームに分かれて対戦する追っかけっこゲームです。捜査陣は怪盗Xの居所を探し出すのが目的で、当然怪盗Xは見つからないように逃げ回るのが目的です
1人が潜伏して逃げ回り、それを追いかける、という構造はのちに「フューリー・オブ・ドラキュラ」や、切り裂きジャックものの「ホワイトチャペル」などに受け継がれてますが、この「ブラックソナタ」はソロゲームです
プレイヤーはレディを追いかける探索者側なので、逃げ回るダークレディはゲームのシステムが担当します
この仕掛け(システム)が、なかなかよくできてるんですよ
レディの居場所を探るには潜伏(ステルス)カードを使います
潜伏カードにはレディのシルエットが印刷されています
セットアップで、潜伏カードを特定の順番にソートしデッキに組むことで、レディの秘密の移動ルートが決まります
ルートはループしているので、デッキをいくらカット(シャフルではなく)してもループは壊れません
そして潜伏カードの裏面にはアイコンの1つが記されており、マップ上の街の同じアイコンに対応してます。レディはそのアイコンのある街にいます
ただし街にあるアイコンは重複してたりするので、例えばカード裏のアイコンが〔家〕だとすると、マップ上には4ヶ所の〔家〕アイコンのある街が存在します。レディはその4ヶ所のどこかにいる可能性がある、というわけです
そしてダークレディは毎ターンの最初に、1移動します。デッキの次のカードが〔樹木〕だった場合は、〔家〕から隣接する〔樹木〕アイコンのある街に移動したということなのです
レディはいるか?
レディを捕捉するには、自分の駒も同じ街にいて探索アクションをしなければなりません
探索すると決めたら、その街カードの上に潜伏デッキのトップカードを重ねます
街カードには穴が開いていて、その重ねた2枚をひっくり返すとその穴(虫眼鏡になっている)からレディのシルエットが見える、という仕掛けなのです
もちろん、その街にレディがいなければ穴からは何も見えません
レディを発見できれば、手がかりカードを1枚見ることができます
この手がかりを得ることが、レディを特定する第一歩です
いた!
本人を特定せよ
「スルース」やその派生である「クルード」などは、あらかじめ隠された要素(凶器や物証など)を特定するには、他の要素を確認して消去法によって正解を絞っていきます
手がかりカードには、最初に伏せられたカードの紋章(スート)に対して、そのカードにはいくつのアイコンが一致しているか、の情報が載っています
例えば伏せられたカードの紋章が〔薔薇〕だとすると、入手した手がかりカードの〔薔薇〕のところに1、とあれば、その手がかりカードの3つのアイコンのうち、1つが正解だということなのです
最大でも正解が2つまでしか分かりませんから、複数の手がかりカードが必要にはなるでしょう
ここで厭らしいのは、0/2という結果があることです
これは2つ正解か、もしくは正解はゼロのどちらかという意味です
しかしマスターマインドや紙ペンゲームの「数当て(ヒット&ブロー)」をやったことがある人なら分かりますが、「正解ゼロ」は非常にありがたいヒントなのです
なぜなら、その3つのアイコンをまるまる消去できるからです
「ありえない可能性を消していけば、最後に残ったのが真実だ」というのは有名なホームズの推理法の1つですが、やはり消去法で真実を絞っていくのは推理ゲームの醍醐味です
入手する手がかりカードが増えていけば、3つのアイコンは論理的に特定されていきます
初歩だよ ワトソン君
タイムリミットまであとわずか
ただし、あまり悠長にもしてられません
このゲームにはタイムリミットが設(もう)けられています。潜伏デッキの底には最初にカウントダウンカードが仕込まれているのですが
プレイ中に、このカウントダウンカードがデッキのトップに出てきたらデッキは1周したことになり、デッキが3周するまでに正解を導かなければ負けです(初期設定では)
じゃあ、どんどん手がかりカードを入手すればいいのですが、そもそも手がかりカードはレディを発見しないと入手できません。レディを発見するには、その街に自分の駒がいる必要があります
ターンの手順は、
1)レディの移動(トップカードをデッキの底に入れる)
2)プレイヤーのアクション
を繰り返していきます
アクションは
・移動
・探索
・霧カードの実行
・パス
とあり、このうちの1アクションしかできません
なので、レディが隣にいるとわかったとしても移動すると、同じ手番で探索はできません
そして次のターンの最初にレディは移動してしまうので、ケツを追いかけているばかりでは探索ができないのです
発想を変えましょう
追いかけるのではなく、待ち伏せるのです
探索するには、その手番でレディが自分の駒の街に移動してくれないとできません
ただしこの待ち伏せで思惑が外れることもあるし、ようやく捕捉したと思って探索するとハズレ、ということもあるのです
居場所はわかっているのに、追いつけない・・・
探偵の敗北
「ブラックソナタ」では負けシチュエーションはもう1つあります
探索アクションをしたら、霧カードをデッキに入れなければなりません
手番で探索したいとおもってもデッキのトップカードが霧カードだと、その手番では探索できないというお邪魔カードなのですが、この霧カードが尽きてしまってもクリア失敗です
探索アクションのたびに霧カードが差し込まれていく
がんがん探索して、霧カードがなくなったらもう手がかりカードは入手できません
そうなるとそれまでに入手した手がかりで正解を導きださなくてはならないのです
2つまでは特定できたけど、あと1つが50%の確率、ということはよくあります
そうなったらもう、刑事のカンというやつに頼るしかないですな(そして外す)
初回プレイでは、ルールの把握もぼんやりしてたこともあり、イチかバチかの探索で手がかりカードを入手しては、最後に50%の特定で成功したり失敗したりしてましたが、レディの移動メカニクスを把握してから、俄然面白くなりました
追いかけるのではなく、先回りする
こちらより先にレディは移動してしまうので、追いかけていては捕まりません。まあ、たまにうっかりとレディの方からこちらの街に移動してくれることもありますが
レディは次に墓地に移動してくる。50%の確率でレディを捕捉できる
手がかりカードに関していえば、これはけっこうドロー運があります
いい感じで手がかりがわかる場合もあれば、後半ギリギリまで最後の1アイテムが特定できない、ということもあります
「ブラックソナタ」では難易度が調整できます
潜伏カード(裏面)にはアルファベットがふってあり、ある配列でデッキを組むことで難易度が変わるんですね(そのためのソートがちょっと面倒ではありますが)
おなじ難易度でも「レディが移動しないかもしれない」可能性のデッキを組むこともできます
このあたりはよく考えられていて、非常に感心しました
一方、一番肝心の手がかりカードは、アイコンとヒントの組み合わせは固定されているので、極端なことを言えば以前にプレイした(紋章の)手がかりカードのアイコンを憶えていれば、セットアップの時点で見当がついてしまいます
同じ紋章のカードは2枚づつあり、セットアップ時に伏せられたカードと同じ紋章のカードを抜出しておきます。だから正確に言えば、アイコンを完全に憶えていたとしても初手で正解するのは50%ということになりますが
もう1枚の手がかりカードの上に街カードデッキを乗せておく
抜き出しておいたもう1枚の予備カードは、マップ上の街を全て訪問すると公開できます
そう、レディを探索する他に、全ての街を通過することでも手がかりを得ることができるのです。これにより、目の前のレディを探索にいくか、効率よく全ての街を訪問するのかのちょっとしたジレンマもあります
デジタル時代のアナログ捜査
最近は、アプリを利用した捜査ゲームや、脱出系、謎解き系のゲームもたくさん目にするようになりましたが、パソコンもスマホも存在しないヴィクトリア朝時代を舞台にしたこの「ブラックソナタ」は、多少システマチックなところもありますが、レディの追跡とアイコン特定の推理要素を無理なくアナログゲームに落とし込んであります
捕まりそうで捕まらない
待ち伏せしていれば、するりと逃げられる
まさに気まぐれ猫のようなレディを発見したときは、してやったり!の楽しさがあります
それでは今夜こそ、レディの正体を暴いてやりましょうか
ということで
追記:
プレイミス
これはソロゲームではよくやりがちなことなのですが、今、この瞬間が手番のどのステップなのかを見逃しがちです
僕は初回のプレイで、まだルールをしっかり把握してなかったこともあり、手番で駒を移動させた後に探索アクションをやってました
上記でも説明したように、手番でできるアクションは
・移動
・探索
・霧カードの実行
・パス
のうちの1つだけです
ただし、トレーニングモードでは移動の後、同じ手番で探索してもいいので、最初はトレーニングモードをプレイした、という言い訳は一応通用しますが
そしてこのゲームは思考型でもあるので、やはり手番中のステップを見失いがちです
特に手がかりカードを入手したときは、新たなヒントに思考を巡らせてしまうので、そういうことが起こりますので、注意が必要です
プレイミスその2
あと、街カードを間違えたこともありました
ロンドンの街名に馴染みがないのと、筆記体ということもありShoreditch(ショーディッチ)とSouthwark(サザーク)を間違えました
探索アクションで、ここをミスってたらどうしようもありません
街カードはアイコンでも識別できるようになっているので、よく確認した方がいいですね
霧カード
探索アクションをしたときには、霧デッキから必ず霧カードを1枚、潜伏デッキのトップカードから2枚目に差し込まなければなりません
探索で使った潜伏カード(街カードに重ねるやつ)は、その後ディスカードされるので、移動ループのデッキ枚数を維持するために、霧カードを入れる必要があるんですね
ところが、最初の1~2回くらいの探索ではこの霧カードをデッキに入れるのを忘れがちです
霧カードその2
記事では詳しく説明してませんでしたが、潜伏デッキのトップが霧カードだったらその手番では探索アクションはできません。その代わりに霧カードの効果を使うことができます
霧デッキのトップカードをめくって、そのテキスト効果を利用するのです
テキスト効果は、手がかりカードを1枚入手できたり、駒を任意の街にワープさせたりといろいろ強いアクションがありますが、もしそれが不可能だったら即、負けになるというリスクもあります
霧デッキを消耗するので、できれば使わずにおきたいところですが、難易度が上がってくると適切なタイミングで霧カードを利用するのは攻略の1つかも知れません
難易度調整
基本ルールでは、潜伏カードのアルファベットをAからZまで並べます
カードにはアルファベットが上下で8ヶ所あるので、それぞれのスロットを使えば8回異なるルートデッキで遊ぶことができます
そして下段の黄土色のバーのアルファベットスロットを使うと、レディは「移動しないかもしれない」という移動プログラムを作ることができます
上部の紫バーのスロットは、レディが必ず移動するので移動先も捕捉しやすいのですが、移動しないかも知れないバージョンでは待ち伏せ作戦が空振りになる確率が高くなります
逆にいえば、同じ街に自分の駒があるときは、そのまま留まってくれる場合もあるのでそいういうときはラッキーですね
移動先もだいたい複数の街に枝分かれするから、追いかけるのも待ち伏せするのもなかなか大変なんですが、あるときレディの居場所が一つの街に絞られる瞬間があります
「スコットランドヤード」でいえば、怪盗Xが顔を出した瞬間ですかね
このときはテンションあがりますね
試行錯誤している最中に、ある要素がピンポイントでフォーカスされる瞬間、といいましょうか、数ある可能性からたった1つの真実を見つけた快感、といいましょうか
レディの追っかけはなかなかドラマチックです
難易度調整その2
ルールブックの後半には、難易度によって並べるアルファベットが一見無秩序に並んだ表があります
基本のAからZに並べる場合は8ヶ所の特定のスロットを利用したのですが、この難易度によるソートは、必ず左上のスロットだけを使います
つまり左上のアルファベットを難易度別に並べるんですが、ここで間違えやすい(僕も勘違いしてた)のは、「移動しないかもしれない」バージョンのソートも、カードの左上のスロットで揃える、ということです
基本ソート(A~Z順)では「移動しないかもしれない」はカード下部の黄土色のバーを使うので、こちらの難易度表でも同じようにソートしてたら、必要なカードが揃わないのです
おかしいと思いgeekのフォーラムで調べたら、全て左上のスロットで揃える、という公式解答があったのでした
いや、これ、非常に紛らわしいよ
ゲームの寿命
記事でも少し言及しましたが、レディの追っかけパートは非常によくできていて、捕まりそうで捕まらない絶妙なバランスが楽しいのですが、一方で一番肝心の謎解き、つまりアイコン特定は、手がかりがフィックス(固定)されているため、数回プレイするとその紋章のアイコンはあれとあれだな、と特定できてしまうところが惜しい
まあ、僕は記憶力には自信がない方なのでもう少しは遊べそうですが、それでも気になることには変わり有りません
ただ、「フェアユース拡張」というものが出ているので、さっそく注文してみました
これがどのくらいゲームの幅を広げてくれるのか分かりませんが、とりあえず遊んでみようとは思います
プリント&プレイ
じつはこのゲームはgeekにプリント&プレイのデータがあります
しかし一番肝心の街カードのパンチ穴を自分で上手に開けなければなりませんが、とりあえず遊んでみたい人はトライしてみてはいかがでしょうか
ついでに言えば、有志による日本語ルールもアップされてます(お世話になりました)しね
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