オートモービル

◇セールスマンは悲しい家業ときたもんだ
恋ヶ窪② 229

ワレスのゲームは、いろんなルールが歯車のように噛みあっていて、はしょりながら説明するというわけにもいかないのでどうしてもインストに時間がかかります

だからここでそのルールの詳細を書こうとは思いませんが、遊んでみてひとつ非常に関心したことがあります

プレイヤーはそれぞれ自動車企業のオーナーとなって、工場を建設したり、もちろん自動車を生産して売って儲けるのがこのゲームの目的です
アメリカで自動車が登場して、やがて大衆車や高級車が生まれていった歴史を背景にしています

だからボードやイラストなどは非常にクラシカルな装いで、ディアゴスティーニの『世界のクラシックカー』と見まごうばかりにシックでノスタルジーなデザインです

クラシックカーマニアならよだれを垂らすようなテーマの経済ゲームですが、悲しいかな僕はそんなにカーマニアでも、ましてやクラシックカーに詳しくもないので「もしかしたらこのタイプは『アメリカングラフィティ』に出てきた車かなー、とか、この車はギャング映画で見たことあるようなないような・・・」くらいの乏しい感想しか沸いてきません

そんな車音痴の人間ですが、これが”車を売るにはどうするか”という優れたビジネスゲームなのでまったく問題ないのでご安心ください

そして”世間の需要”という、つかみ所のない要素を上手くシステムに組み込んであります
非常に関心した、というのはここです

このゲームの基本は生産した自動車を(できるだけたくさん)売ることですが、売り方にはセールスマンによる営業販売と、世間の需要による流通販売があります

この需要の決め方が面白いのです

ゲームの最初に各プレイヤーは袋から需要チップをドローして自分だけが確認します
そしてラウンドの最後に全員がチップをオープンして、その合計値(需要)に応じた販売数が解かるのですが最初は自分がドローしたチップの情報しかありません

需要チップは2~5の額面が4枚づつなので、もし4人プレイなら最低でも8台は世間に売れます
だから自分がドローした需要チップが4だとすると、最低でも需要は10あるという情報を得ることになります
需要ちっぷ
*最初、チップが色付けされてるので自動車のタイプ別に対応するのかと思ってたら、チップの色は関係なかった。数字別に色分けするのはいいけど、紛らわしいので車のタイプとは別の色を使ってくれたら良かったのに

もしあるプレイヤー(企業)がドカッと自動車を生産したとすると、高めの需要チップを握ってるなと解かります

”世間の需要”は、世間の動きや気分を読むのではなく、同じ企業(プレイヤー)がどれくらい生産するかどうかを見ることで予想するわけです

企業のマーケティング部は、アンケート調査やエリアでの販売実数などのデータを元に必死に世間の動向を知ろうとするわけです
しかしどれだけ調査したとしても、これからなにがどれくらい売れるのかといったことはどこまでも不確定です

なにせ世間というのは気まぐれですから、前回売れた商品が次も同じように売れるとは限りません
そしてこのゲームでは、需要の上限が解かるのはラウンドの後半です

つまり、不確定な予想をもとに自動車の生産数を決めなくてはならないのです

そして需要の上限が判明したとしても、そのパイはプレイヤー(企業)全員が平等に受け取るわけではありません
より時代の先にいて、より最先端モデルの自動車から売れていくのです

つまり需要を正確に予測したとしても、そのパイを奪い合う椅子取りレースで有利なポジションにいないとダメなのです
だからこのゲームのメインはポジション取りだと言えます

手番順を含めて、あらゆるフェイズで行うことは”いかに有利なポジションを取れるか”の争いなのです

ボードの外周は生産マスのトラックになっていますが、時計回りに最先端になっていきます
そして最先端を進むには、コストがかかります(研究開発コマ)

1歩(マス)先ならコスト1ですが、先のマスの数に応じてコストも2,3,4と嵩(かさ)んできます

恋ヶ窪② 242
*ちょっと見づらいけど、いま黄色企業が最先端を走ってる。ここより時代を先取りするには先へいけば行くほどコスト(研究開発コマ)がかかる。マスごとにコストがかかるので2マス先を押さえようと思ったらコスト3かかる

そして無理してがんばってなんマス先のポジションを取ったとしても、次のプレイヤーにその1マス先をコスト1でヒョイと押さえられてはかないません

さらに最先端から手前の時代の空きマスはコストがかからないので時代を一足飛びに進んでも、他プレイヤー(企業)が得するだけじゃん、というジレンマがあるのです

いつどのタイミングで最先端のイスに座るか、の判断が悩ましい

しかしもし時代のポジション取りで後手を踏んだとしても、まだ自動車をより多く売る手段はあります
それがセールスマンと広告による販売戦略です

プレイヤーは自分のセールスマンを派遣することで、直で自動車を確実に販売することができます
3人のセールスマンが営業に成功すれば、3台がすぐに売れます
もし需要であまり捌(さば)けないと思ったら、前もってセールスマンで自動車を売ることによって売れ残りのリスクを軽減することができるわけです
恋ヶ窪② 240
*赤と緑と黄色会社からセールスマンが派遣された場面。上から高級車、中級車、大衆車。左の営業ボックスはラウンドごとに上限があるのでそれ以上のセールスマンが派遣されると誰かがあぶれる

しかしセールスマンによる販売数も上限が決まってます
ここでも熾烈な椅子取り合戦が繰り広げられるわけですね

営業に成功したセールスマンは、そのまま派遣され続けますが営業に失敗したセールスマンは撤去されます
その上、損失(黒キューブ)をもたらしてくれやがります

優秀なセールスマンは、会社にいることがありません
会社に残っているのは無能なセールスマンです
派遣されてすごすごと戻ってきたセールスマンはダメ社員のレッテルを貼られ、きっと会社で冷や飯を食わされるのでしょう

庶務課の可愛い女子社員ともいい感じに発展しそうだったのに、きっとデートもキャンセルされて赤ちょうちんでひとり酒を余儀なくされるのです

営業とは、会社とはかくも厳しい世界なのですねw
恋ヶ窪② 245
*激烈なる営業争い。枕営業は効果ありません(多分w)

企業が打てる手はまだあります
それが広告です

【役員会議フェイズ】では手番順に広告を打つかどうかを決めることができます
広告駒を配置すれば、需要による販売フェイズで自分の順番が回ってくるたびに1台ではなく2台づつ売ることができます

パイが決まっている状況で少しでも多く売ることは、他企業へのダメージにもなるわけです

広告駒も3つしかないので手番によっては広告を打てない場合もありますが、このフェイズでは、パスしたプレイヤーから次の手番順が決まっていきます
だから次のラウンドの手番順で有利になるために、いち早く手を引く判断も重要になってきます
恋ヶ窪② 231
*【役員会議】で取れるのは広告マーカー(白)と割引マーカー(灰色)と、廃棄タイル。実は生産工場を廃棄することで現金が入ってくるし、損失キューブを半減できる効果もある。白の広告マーカーを取るにはやはり研究開発コストを支払う

プレイヤーが人事を尽くせるのはこのフェイズまでです
あとは直後の【販売】と【損失】フェイズの天命の処理をするだけです



需要チップをドローして、全体の需要の総和を予測して生産する、という骨組みは「ブラフ(ライアーズダイス)」にも似ています

「ブラフ」の場合は、需要の総和を予想(ビッド)するだけでしたが、「オートモービル」では総和を予測しながらシビアな椅子取りレースをしていくわけです
ぶらふ

そしてこの需要もラウンドによって変化します
このゲームでは自動車は3タイプあります(中級車、大衆車、高級車)

第1ラウンドでは中級車の需要しかありません
このときに大衆車や高級車を生産しても、まだ世間ではそれらの需要がないので売れません

第2ラウンドになって、大衆車の需要が出てきます
ここからは需要チップを2枚づつドローして、数値の大きい方と小さい方に分けて中級車と大衆車の需要に当てます

しかし3ラウンドめでは、より需要が大きいのが大衆車になってきます
そして4ラウンドめでは、さらに袋からランダムにドローして大衆車の需要の総和に加算されます

低価格の大衆車の大量生産時代が到来するわけです

その一方で高級車はプレイヤーがコントロールできません
高級車の需要の数値だけは、毎回袋からランダムドローです(2~5までのランダム)

おなじ自動車販売といってもそのグレードによって生産や販売数、需要の棲み分けがある、ということまで表現されているのは本当に見事です

ラウンドの最初の方で需要がないからといって、大衆車や高級車が売れないわけではありません
セールスマンでそれらを販売することができるのです

これが営業の力、というものでしょうか
恋ヶ窪② 236
*ラウンド1の下には茶色(中級車)の需要しかない。ラウンド2で茶とグレー(大衆車)の需要が増える。ラウンド3では大衆車が中級車の需要を上回り、ラウンド4では需要の総和に加算される(+1)。その一方で高級車(ゴールド)の需要は毎回ランダムに1チップドローされるだけ
ちなみに上の$10~40というのは損失キューブ1個につきの損失額


需要がない商品をコツコツ売り続けることで世間に認知させ流行を生み出す、というところまでは反映されていないのは残念というかもったいないような気もしますが、それは自動車産業とは別のテーマで掘り下げたほうがしっくりくるでしょう


恋ヶ窪② 233
*歴代の名経営者の方々。それぞれ建設が得意、営業が得意、会社の損失をなんとかしてくれるなどのアビリティを持つ。彼らは研究開発コマをもたらしてくれる
そしてキャラを選ぶと、上から手番順となる




今回、立川の重ゲ会でプレイさせてもらったのですが、なるべく損失を抑えようとプレイした僕は最下位でしたw

小ぢんまりとした中小のサイズでの商売なら、なるべく損失を出さないような”身の丈経営”は賞賛されるでしょうが、もっとおおきなマス(大衆)を相手にする大企業の経営には損失を見越した上で利益を上げる手腕が求められるのです

つまり利益の振り子は、マイナス方向に大きく振れることでプラスにも大きく振れるのです
損失を恐れていては大企業は回していけません
リスクすらもマネージメントするのが大企業なのでしょう

そういう意味で大企業のビジネスを学ぶにはもってこいのゲームかも知れません
kane.jpg

よく企業向けの研修用ボードゲームという、多少いかがわしいゲームをよく目にしますが、それよりはこの「オートモービル」を遊べば企業経営の流れ、ジレンマ、決断の仕組みが一発で解かるような気がします

毎週『カンブリア宮殿』や『ガイアの夜明け』、11時代には『ワールドビジネスサテライト』を見ているような人(ま、僕のことですがw)にはピッタリのゲームであることは間違いありません

なんなら村上竜徳大寺 有恒カルロス・ゴーンあたりのメンバーでこのゲームをプレイさせてニコ生でじっくり見たいものです
小池栄子

けっきょく、小池栄子が勝ったりして

というわけで
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流星キック1998

Author:流星キック1998
チャンスがあればいつでもボードゲームがしたい!誰か遊んでプリーズ

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