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トリックテイキングのこころ

下巻

この記事は「Trick-taking games Advent Calendar 2015(トリックテイキングゲーム・アドベントカレンダー2015)」の、21日目の記事として執筆したものです

スティーヴン・キングに『アトランティスのこころ』という小説があります。
本書は5つの中短編から構成されており、その中の一つの中編のタイトルが「アトランティスのハーツ」です
本エントリーはそれをもじっているので「こころ」を「ハーツ」と読み替えていただくとありがたい

というわけでトリックテイキングゲームではもっともポピュラーなハーツの話です

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肝心な点を述べておくなら、ハーツはまず楽しいゲームであり(中略)、たちまちこのゲームに囚われてしまう、ということだ

この小説は、1966年ベトナム戦争中のアメリカ・メイン州の大学生寮で、大流行した賭けハーツに主人公がのめりこんでいく話です
僕もデザインの専門学校生時代にハーツにハマリました。小説の主人公のようにお金を掛けてたわけじゃありませんが、いつもきまったメンバーと毎晩ハーツ(当時はハートと呼んでましたが)を遊んでたのです


初心者に最初に奨めるトリックテイキングはなにかいいか、という話題は定期的にあがってくるトピックです。
ビッド系なら「オーヘル」や、その派生商品の「ウィザード」「スカルキング」あたりでしょうか

ビッド系というのは、最終的に自分がなんトリック取れるのかを最初に予想して、計画通りにプレイできるかどうかというタイプのトリックテイキングです。

一方、単純にマイナスのカードをできるだけ取らないようにするのがハーツ系です
小説に簡潔で無駄のないハーツのインストラクション(説明)があります

理想的なプレイヤーの数は四人。トランプのカードがすべてくばられてから、駆け引きのゲームがはじまる。一回のゲームでやりとりされる点は合計で二十六点ーーー十三枚のハートの札それぞれが一点で、スペードのクイーンは一枚で十三点になる。四人のプレイヤーのうち、だれかの罰点数が百点を越えればゲームは終了。もっとも罰点数のすくなかった者が勝者となる。

Qはたった1枚で13失点します。通称、ブラックレディ(小説ではもっと下世話に<性悪女>=ビッチと呼んでますが)

多少ののカードは引き受けても絶対に取りたくないのがブラックレディです
Qは無慈悲な黒の女王なのです
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ハーツはいわゆる正統的なトリックテイキングなので、マストフォローが原則です
リード(最初にプレイされるカード)がスペードで、自分の手札にスペードのカードがあれば必ず出さなければならない、という鉄のルールです

このとき、手札にブラックレディ(スペードのQ)しかなかったら?

Qはかなり強いランク(カードの強さ)なので、それを出せば恐らくそのトリックに勝ってしまうでしょう
手札にフォローできるスペードがQしかなければ、自爆すると解っててブラックレディを出さなければならないのです

これがマストフォローの怖さです

しかし自分がブラックレディを持っていなければ、マストフォローを利用する手段があります
早い段階で、スペードのリードを繰り返し、誰かが抱え込んでいるブラックレディを炙り出す(プレイさせる)。僕らはこれを「魔女狩り」と呼んでましたが他人が自爆するのを見るのは実に楽しいものですw

これがマストフォローの威力です

この魔女狩りにもちゃんとした正当な理由があります

マストフォローのルールというのは、フォローできない場合はなにをプレイしてもいいのです。その代わりトリックに勝つことはできませんが(ハーツには切り札はありません)

リードされたスート(ハートやダイヤ、クラブ)を持っていなければこのブラックレディをプレイしてそのトリックに勝つ人に押し付けることができるのです!

これをくらったら一撃必殺、クリティカルダメージです
ブラックレディは自爆するリスクもありますが、誰かに大ダメージを負わせることができる必殺武器でもあるのです
これが怖いので、早めに魔女を狩るのはセオリーとなるわけです

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ブラッドは負けをとりかえそうと躍起になっていた。(中略)手もちのカードからスペードを一枚出して、「<性悪女>狩りをおっぱじめようぜ!」と叫ぶ始末。

ハーツではプレイの前に、手札から数枚のカードを隣のプレイヤーにパス(渡す)します。このときマイナスとなるハートのカードやスペードのQをつい渡してしまいがちですが、隣からどうせマイナスカードを渡されるのがオチです

ここではボイドを作るのがセオリーです
ボイドというのは、あるスートを枯らす(手札からなくす)ことです

リードされたスートが手札になければどのカードを捨てても構わないというのがマストフォローなので、ボイドを作ることはとても大事な作戦であることは、何度かハーツをプレイすれば身に染みてわかります

かつてサッカーにおいて、オフサイドというファールは”結果”でしかありませんでした
ところがクライフ率いるオランダ代表が、意図的に敵をオフサイドポジションに置き去りにする戦法を編み出しました
それが今ではよく知られているオフサイドトラップです

自然になにかのスートが枯れるのを待っているのではなく、積極的にボイドを作るのです。できれば初手から。
ボイドのスートがリードされたらハートやブラックレディを放り込み放題なのですからこんなに楽しいことはありません

ただし、せっかく枯らしたスートが隣から渡されてオフサイドトラップが失敗することもよくありますがw


ハーツの特徴は、自分の身を守るために自然とコツが解ってくるところです
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(略)このゲームの二、三の簡単なコツーーー四つの組(スート)のうち、最低でもひとつは手もとに一枚のカードももたない組をつくること、中程度の大きさのハートの札は、シュート・ザ・ムーンを狙いがちなプレイヤーに押しつけること、そして一巡で場に出されたカードをとる羽目になったら、できるだけ数の大きいカードを出すこと

シュート・ザ・ムーンとは、マイナス札を全部獲得することで、これが成功すると26失点が逆にプラス26得点になる一発逆転ワザです

ビッド系トリックテイキングでは手札が弱ければどんなにスキル(技術)があっても勝てません。しかし手札が悪ければヌルビッド(ゼロビッド)、一切トリックを取らないという方法が用意されてます

ハーツでも、2~3枚パスしたくらいではどうにも手札が改善できないこともままあります。そういうときはいっそ逆スラム、シュート・ザ・ムーンを狙うチャンスです

たまに、うっかりマイナスカードを獲ってしまったがために一か八かでシュート・ザ・ムーンに方向転換する場合もありますが、そういうときはだいたい失敗します

シュート・ザ・ムーンを失敗すると大量失点なので、慎重にプレイすることになりますがマイナス札を全部狩り獲れるかどうか確信するまで、心臓のドキドキは止まりません

シュート・ザ・ムーン狙いは心臓(ハート)に悪いのです

しかし決まればこれほど爽快なこともないでしょう
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また、自分が徴兵され、ジャングルに送り込まれて死ぬことになるという考えも、遠いものにしか思えなかった。いま肌にひたひたと迫る現実として感じられていたのは、<性悪女>を狩りたてることか、そうでなければうまくシュート・ザ・ムーンにもちこんで、おなじテーブルにいるほかのプレーヤーに二十六点をお見舞いしてやることだけ。現実と思えたのはハーツだけだった。


ハーツは基本4人ゲームですが、僕が専門学校生時代にいつもハーツを遊んでいたのはT君とS君との3人でした。
3人ハーツの場合は、ランダムに1枚を抜いて残りデッキを配り切るのですが、僕らはクラブの2を抜いてました。『アトランティスのハーツ』の主人公はキッカーカード(伏せられて除外されるカード)がある3人ハーツは好きでないと述べてますが、僕らは3人ハーツをこころから楽しんでいました

小説の大学生たちは学生寮の三階ラウンジにたむろって賭けハーツに熱中しますが、日本ならさだめし麻雀に熱を上げる学生、といったところでしょう

どちらにも共通しているのは、それはギャンブルだということです
もし僕があの頃、遊ぶ友人が4人いたら麻雀にハマって少ない生活費をつぎ込んでいたでしょうか

しかし周囲に麻雀に詳しい知人も見当たらなかったし(いたのかも知れませんが)、遊び仲間は3人だったので麻雀には縁がなかったともいえます
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というか、僕がハーツを遊びたかったので仲間に教えたのがハーツ熱のきっかけです
幸い、他の2人もハーツを気に入ってくれたので連日、毎晩のようにプレイしたのですがもちろんお金を掛けるという発想はありませんでした(スコアをとっていたかどうかも覚えていません)

つまりゲームの面白さ、友人らとの駄弁りの楽しさだけで、いくらでも時間は潰せたのです。
ファミコンブームが来るのは、そのもうちょっと後というタイミングもありました。中野に住んでた僕らは、自転車で新宿に行って夜のゲームセンターで安いビデオゲームを遊ぶこともしょっちゅうで、童顔のS君が補導員に声を掛けられたのは笑い話として今でも記憶しています

まだ風営法も緩く、ゲームセンターは一晩中営業してました
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『アトランティスのハーツ』の主人公は、ガールフレンドから「あの馬鹿馬鹿しいカードゲームからは足を洗うこと」と何度もたしなめられますが、僕らになにかをたしなめてくれるガールフレンドはいませんでしたからw、心ゆくまでハーツに没頭できたのです(^^;

この小説はベトナム戦争に対する若者の複雑な思い、ハーツに熱中しながらも出会いや別れを中年になった主人公が回想する(キングの小説ではお馴染みの)というストーリーです

中編といっても300ページ以上あるので、普通の小説の長編クラスなのもいつものキング流(サイズ)です

主人公はシュート・ザ・ムーンが成功する直前に、ある出来事があってゲームが中断したことで、それ以来大学でのハーツをやめてしまいます

「もうハーツから足を洗うことにしたよ」わたしはいった。

僕は小説の主人公と違ってハーツから足を洗うつもりはまったくなかったのですが、ある日、友人二人がつまらない原因で喧嘩したのがきっかけで、それ以来僕らが3人でハーツを遊ぶことはなくなりました

キングの小説では主人公の友人知人、ガールフレンドの現在が語られますが、諸星大二郎の漫画が好きだったT君とはそれきりで、どこでなにをしているのか解りません

S君とはその後も少し付き合いがありましたが、だんだん疎遠になっていきました。ある日、合宿免許を取りに離島にいるという連絡があり「毎月買っている音楽雑誌を買っておいてくれないか」と頼まれたのは覚えてます

しかしその連絡以来、S君とも音信不通となり、いまどこでなにをしているのか知りません。その音楽雑誌は本屋の袋に入ったまま、まだ僕の手元にあるはずですが

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『アトランティスのこころ』は「ナポレオンの思い出」というエントリーでさとさんも紹介されているように、トリックテイキング好きな人ならわりと周知の小説かも知れません

そこで、もう一つハーツを題材にした小説を紹介しましょう
『ハーツ―死に抜けゲーム』(久綱 さざれ )です
ハーツ

こちらは別々の場所にいる男女7人が共通の夢の中で、生き残りをかけてハーツをプレイしながら謎を解く、というデスゲームですw

夢の中で生き残りを賭けてハーツ?

僕は出版された当初に読んだのですが、内容はすっかり忘れているので読み返したら面白いかなぁと思ったのですが、もう品切れのようです

もし古本屋さんか図書館で見かけたら、お好きな方は読んでみてはいかがでしょうか

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「やろうじゃないか」スキップがいった。
「ぼくも乗った」わたしは、地理の教科書には一回も目をむけないままいった。
「ハーツかい?」カービー・マクレンドンがたずねた。(中略)「いいとも。なかなかいい趣味だな」


※引用はすべて新潮文庫『アトランティスのこころ』白石朗訳より

というわけで
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